肌にまとわりつくようなジトジトとした空気、晴れ間がのぞく梅雨の中休みにも関わらず重くしっとりとしている。
そんな中、お昼前の事務所に顔を出したのはカーディガンにショートパンツ姿の松山久美子である。
「お日様が見えたのはいいけど、こんなに暑くなっちゃうなんてね。ちょっと想定外だったわ」
少し高めに設定された空調の作る心地よい空気に少しぼんやりとしていると、向かいのビルを望む大きな窓の上部に白いものが揺れているのが目に留まった。
あら、てるてる坊主かしら…懐かしいわね…と呟きつつ近づいていくと確かにそこには個性豊かなてるてる坊主がぶら下がっていた。
「私も小さいころはよく作ったわ。遠足とかお母さんとのおでかけの前の日とかね」
しばらく眺めているとふと何かを思いついたように傍らのトートバックを漁り、あっという間にてるてる坊主を作り上げた。
彼女のメイクアップしたてるてる坊主は、隣に並んだものよりも心なしか大人びて見えた。
次の日これを発見した市原仁奈は「これは久美子さんが作ったものだとすぐわかりました。首を留めるゴムやほんのりメイクののったお顔にオリジナリティを感じます。少し時間を持て余し気味な昨今、皆さんも自分だけのてるてる坊主を作ってみてはいかがでしょうか?」と新しい時間の使い方を提案した。