炎天、道を敷く石の激しい照り返しを受けながら撮影は続く。松山久美子は旅番組のロケで伊勢神宮へと来ていた。
カット!…威勢のいい声がかかる。
「ふう…さっきまでの横町の賑わいが嘘みたいね。荘厳さがあって時間がゆっくり進んでいるみたい」
彼女は宇治橋から内宮へと入り、ガイドさんの話に耳を傾けながらその美しさを讃え進んでいく。
時折ファンに小さく手を振り、建て替えが終わったばかりの社殿にほうっと溜息をつく。
撮影は順調に進んだ。
…
「さて、撮影が順調に終わったら何か食べさせてくれる約束だったわね。期待してるのよ」
プロデューサーが連れて来たのは一軒のうどん屋。伊勢のうどんは一癖も二癖もあるそうだ。
さて出てきたうどんだが、こぽんとした容器に白く太いうどんがのたうち容器の底に黒いたれが顔をのぞかせる。
すすろうとすると太くもっちりとした麺がそれを拒み、噛みしめるとたれの風味が口全体に広がる。
蕎麦のようにすすろうとして思いのほか苦戦する彼女を、笑顔で見つめるプロデューサーであった。
話を聞いた小室千奈美は「私も香川で地元の味である讃岐うどんを頂きました。様々な文化としてのうどんを追っていくのも、今後面白いかもしれませんね」と決意を新たにした。